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新規就農者が休園中の柿・みかん狩り園「まつば農園」を再生へ 下田市大賀茂

 下田市大賀茂に残る最後の柿とミカンの観光農園で、経営者の加齢と体調不良などから休園している「まつば農園」が、栃木県から移住した新規就農者の手で再生に動き出した。人の手が入らずに荒れたミカン畑で滞った剪定(せんてい)や施肥、摘果を行い、樹勢が衰えた古木に代えて生産性の高い苗木を植栽。「ミカン狩りを楽しみにしている人たちの期待に応えたい」と地道な作業に取り組んでいる。
 農園主の笹本フサヨさん(88)に代わって農作業を行うのは、大手自動車部品メーカーのエンジニアだった大木国昭さん(64)。山形県の農家の生まれで、定年退職を機に農業の世界に飛び込んだ。就農希望者を対象にした県の短期研修に参加し、南伊豆町のミカン農家で栽培の基礎を実習。そのまま同町に移住し、農協の仲介で、高齢と体調不良で現場から遠ざかった笹本さんに代わって農作業を一手に引き受けた。
 同農園では約70アールで次郎柿約20本、温州、ポンカン、デコポンなどのかんきつ80本を栽培しているが、コロナ禍の休園も重なって人の手が入らず、かんきつの一部は害虫で樹勢が低下していた。大木さんは研修後も果樹栽培の知識、技術を独学し、剪定、消毒、施肥、摘果を地道に実施。さらには樹高が低く作業効率の高い新しい苗木を植えるなど、モノづくりにかけるエンジニア魂で、生産性の高い農園を目指して孤軍奮闘している。
 樹勢が回復し、苗木が順調に育てば、3年後には観光農園を再開できる見通し。その間収穫した実は少量だが、南伊豆の直売所で販売する。
 大木さんは「前にミカン狩りに招待した地元の子どもたちの笑顔が今も忘れられない。再開を心待ちにしている子どもや観光客のためにも高品質の柿、ミカンを育て、地域に貢献できる観光農園として再出発したい」と決意を語った。
 大賀茂地区はかつて「柿とみかんの里」として売り出され、秋には多くの観光客らでにぎわった。その後は高齢化と後継者難で数々あった観光農園が次々に看板を下ろし、まつば農園が最後の1軒となっていた。

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