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働く人に愛され33年 仕出し弁当「味よし屋」閉店―熱海

 熱海市銀座町の仕出し弁当店「味よし屋」=森初比香(はつひこ)さん(73)経営=が25日で閉店した。「休まずやります」をキャッチフレーズに、土、日曜日、祝日も手作りのおかずを詰めた弁当を届け、観光地・熱海で働く人たちを支えた。人手不足や原材料高騰のため、33年間愛されてきた店ののれんを下ろした。
 
 熱海第一ビルで飲食店を営み、売店に弁当を出したのをきっかけに1990年に「味よし屋」の屋号を掲げ、仕出し弁当店を始めた。週末、祝日が忙しい熱海で湯河原から南熱海まで、宿泊施設、介護施設、観光施設に弁当を届けて回った。
  手を掛けたおかずがこだわりで、レパートリーは豚の角煮、回鍋肉、生姜焼き、ピカタ、アジフライ、エビフライなど和洋中約100種に上る。森さんは「秋はクリ、夏はトウモロコシご飯を詰めて季節感を出した」と振り返る。
  2019年、銀座町に移転し、弁当の加工場と併設して飲食店も開業。弁当ばかりでなく、外に出て食事をしてほしい―との思いで、市民食堂の名で500~600円の定食を中心に提供した。
  これまで約10人のスタッフでシフトを組んで調理、詰め込み、配送に当たっていた。長年勤めるスタッフも年齢を重ね、勤務態勢を維持するのが難しくなっていた。食材費の高騰で製造中止したおかずもあり、品数の維持にも苦労していたという。
  最終日、タルタルソースをかけたチキン南蛮をメインにした弁当を約280個作った。店にはこれまでの働きをねぎらう花が続々と届いた。
  森さんは「本当に感謝の一言。いろいろな人に教わり、支えられた」と話し、「夢と希望は捨てず、教わったことを誰かに還元したいと思っている」と前を向いた。

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