伊東市竹の内の鈴木歯科医院=鈴木徹雄院長(87)=は、4月末で閉院する。1966(昭和41)年の開業以来、約60年にわたり市民の歯の健康を守ってきたが、鈴木さんの年齢により幕引きを決めた。鈴木さんは「多くの人の面倒を見てきたが、私のほうが面倒を見てもらったようだ。歯科医師人生を全うできた」と感謝する。
鈴木さんは新井に生まれ、日本歯科大に進学した。都内で修業後地元に戻り、父親が営む電気工事会社の2階を改修して開業した。
鈴木さんは開業以来、他に医師を置かず一人で診察してきた。開業当時は国民健康保険法施行の影響で市民の健康意識が向上し、爆発的に患者が増えた。一日に107人もの患者を診る日もあり、鈴木さんは「結婚式の前日も夜中の12時まで診察した。商売のつもりはなく、人助け。とにかく一生懸命だった」と当時を振り返る。
開業当初から全力で走り続けてきたが、いよいよ体が思うように動かなくなり閉業を決断した。それでも自分の患者は責任をもって最後まで診たい―と、現在は長年通う3人のみ診察している。そのうちの一人で、数十年通う地元の70代女性は「本当にお世話になったのでさみしい。最後の日は花束を持ってねぎらいに行く」と語る。
鈴木さんは引退後、気ままに自分の時間を過ごすという。「まずは自分の入れ歯を直す。これからは自分の面倒を見なきゃね」とおどけて笑う。
最終診療日は28日で、初診は受け付けない。