下田地区消防組合を構成する下田市、南伊豆町、河津町、松崎町、西伊豆町と下田消防本部が新年度から、出産が迫った妊婦を救急車で医療機関まで運ぶ新サービスを開始する。下田市二丁目の産婦人科「臼井医院」が今月末で出産業務を終了、賀茂地区で出産を扱う医療機関がなくなり、遠方の医療機関の利用を余儀なくされる妊婦の負担軽減、安心・安全確保が狙い。関係者への取材で分かった。
臼井医院の方針を受け、5市町で取りまとめた対策の一つで、協力要請を受けた同本部が現在の救急体制を維持したまま実施する方向で準備を進めている。
自治体サイドの幹事を務める南伊豆町によると、利用は任意の事前登録制で、各市町の担当窓口で母子手帳交付時にサービスを紹介し、登録を促す。登録された情報は消防と共有し、出産の兆候発生時、妊婦らの要請を受けた消防が救急車で出産する医療機関まで運ぶ。運ぶ先は伊東市や伊豆の国市の医療機関を想定している。
使用する救急車は下田、南伊豆、河津、西伊豆の各署に配備した6台と予備車1台。救急隊員の人員、勤務体制は変更せず、通常の救急業務の範囲内で任に当たるという。
南伊豆町健康増進課の担当者は「出産の兆候発生時、家族に送ってもらえない事態や緊急を要するケースもある。いざというときに救急車で運んでもらえるという安心感を提供したい」と話した。下田消防本部の担当者は「救急隊員は助産師を講師に妊婦対応の研修も重ねている。安心して出産できるよう支援したい」と語った。当面は出産兆候発生時のみの対応とするが、将来的には計画出産への対応も検討する方針を示した。
伊豆地区では現在、熱海市が妊婦を市外の医療機関に運ぶサービスを行っている。