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伊豆急下田駅 20年季節の草花で彩る 最後はストレチア―南伊豆・農家藤池さん

 伊豆急下田駅内にある券売機横の一角に、南伊豆町の農家、藤池ひろ子さん(80)が20年間無償で、季節の草花を生け続けてきた。藤池さんの花は旅人を癒やし、季節の移ろいを告げた。加齢による体力の限界からこのほど、最後となる花生けを終えた。鮮やかなオレンジ色の翼を広げたようなストレチアが、寂しくも美しい光彩を放っている。
 
 藤池さんが活動を始めたのは退職直後の約20年前、親の入院で毎日見舞いに通う中、「何か楽しいことを始めたい」と、自ら当時の駅長に掛け合ったのがきっかけ。花生けの最初のころは、駅関係者らの理解もままならず「何度もやめようと思った」と振り返る。しかし、自宅の庭や山で美しい花や葉を見つけるたびに「次はこれを飾ろう」という思いが湧き、週に2回の生け替えを続けてきた。
 客の服を汚さぬようユリのおしべを丁寧に取り除き、空間の広がりを大切にするために立派な展示ケースの話も断った。駅員手作りのテーブルに白い紙を敷き、ひっそりと、だが凜(りん)として咲く花々。その美しさに見とれるあまり、電車の発車時刻ぎりぎりでホームへ駆け込む若い女性の姿もあったという。
 春は花桃、夏はヒマワリ、秋はコスモス、冬はロウバイなど。藤池さんが運び続けた四季の便りは、駅の意見箱に感謝の手紙が届くほど、多くの人の記憶に刻まれている。
 しかしこの1年、特に体力の衰えを痛感。「駅までの運転も怖くなった」と、惜しまれながらも活動に終止符を打つ決断をした。「駅関係者の手厚い支援や、利用者からの『きれい』『立派』という直接の言葉が一番の励みだった」と、藤池さんは万感の思いで語った。
 加藤博章・下田駅長は「自分も含めて5人の駅長が交代する長い間、取り組みを続けていただいた。無機質な場所に、優しさを提供してもらい本当にありがたかった」と感謝した。

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