伊東市の田久保真紀市長の私文書偽造と学歴詐称疑惑を巡り1日、市議会は9月定例会本会議を開き不信任決議案を全会一致で可決した。市政史上初の出来事で、田久保市長は11日までに市議会解散か自身の失職、または辞職の選択を迫られた。地方自治法違反容疑による刑事告発も全会一致で可決し、伊東署に即日受理された。
不信任決議は四宮和彦氏が発議者として案文を朗読した。賛成討論には佐藤周氏、大川勝弘氏、篠原峰子氏、重岡秀子氏、犬飼このり氏の5人が立った。
5月の市長選で田久保氏を支援した重岡氏は「(市長は)クリーンで開かれた市政を望む市民の力で当選した」と擁護しながらも、「クリーンな市政を掲げた市長が範を示すべきだ。疑惑に対して正直に答えてほしい。これが多くの市民の声だ。ここに誠実に答えられなかった市長の政治的責任は大きい」と断じた。
刑事告発は出頭拒否、記録提出拒否、証言拒否、虚偽証言の4件で行った。虚偽証言の内容は、▽卒業証書とされる書類の提示時間を「19・2秒」とした▽「(6月28日に)初めて卒業していないという事実を知った」―の二つ。
9月定例会は1日に開会し、会期を10月8日までの38日間に決めた。初日は議会改革特別委員会や百条委員会の報告もあった。田久保市長は終始、何らかのメモを取るようなしぐさをし、時々登壇者の方を見るなどしていた。
伊豆地区での不信任決議可決は2019年の松崎町以来。
■千葉県男性告発も受理
田久保市長に対して有印偽造私文書等行使罪と虚偽公文書作成罪、同行使罪の疑いがあるとして、千葉県の30代地方公務員男性が刑事告発をし1日、伊東署に受理された。男性は7月31日に同署へ告発状の写しを届けていた。
■学歴勘違い 虚偽と断定―百条委 調査結果を報告
伊東市の田久保真紀市長の私文書偽造と学歴詐称疑惑について調査をしてきた百条委員会の井戸清司委員長は1日、開会した市議会9月定例会で調査結果を報告した。東洋大から提出された記録から「6月28日に卒業していない事実を知った」という田久保市長の発言は虚偽と断定し、学歴詐称は故意性が認定できると判断した。
百条委によると、大学に求めた成績証明書と履修要覧の卒業要件に関わるページの写しが提出され、8月29日に開かれた秘密会で4年次に卒業できる見込みがなかったことが裏付けられたという。
「大学を卒業したものと勘違いしていた」とする田久保市長の主張には無理があるとし、6月28日以前から自身が除籍であったことを知っていたと断定できるとした。
大学からの提出書類では卒業証書が授与された事実もなく、出自不明の卒業証書は正規ではないと説明。「広報いとう」のプロフィルに東洋大卒と記載した件については、秘書広報課長に卒業を誤認させたことが直接の原因と分析した。
井戸委員長は「虚偽の主張により隠蔽(いんぺい)することで、自身の故意性を否定し、責任追及を免れようとした」と結論づけた。
百条委は7月11日~8月29日、8回にわたり開かれた。
■「良識ある判断を」 中島議長 通知書を手渡し
伊東市議会9月定例会で田久保市長に対する不信任決議案が可決されたことを受け、中島弘道議長が市役所市長公室で田久保市長に不信任議決通知書を手渡した。
中島議長は「本議会はあなたを信任しないと議決した」などと通知書を読み上げた後、「良識ある判断をお願いする」「市議会としては一刻も早く市長が辞任してくれることを望んでいる」と求めた。
田久保市長は「中身をしっかり精査させていただきたい」「(市議会の)意向は受け止めた」と述べるにとどめた。不信任決議にどのように応じるかという報道陣からの質問に、「今受け取ったばかり。即答する類いのものではない。まずはきちんと持ち帰って、もう一度中身を見させてもらい、考えた上で決めたい」と答えた。
■(解説)あくまで市議会解散か 次年度予算編成に支障恐れ
伊東市政史上初、県内でも2019年以来の首長に対する不信任決議案が全会一致で可決された。市議会、市職員、経済3団体、1万人もの市民からノーを突き付けられ「本市の負の象徴」とまで断罪された田久保市長だが、あくまで失職は選ばず議会解散に進む公算が大きい。
田久保市長支援者の間では既に、「9月10日市議会解散、10月19日投開票」という情報が飛び交う。市長は報道陣の問いに回答を拒み続けるものの、熱烈な市長支援者は疑惑を暴いた市議会に強い怒りを抱えており、解散は不可避の情勢だ。絶大な市長の知名度を借り“田久保党”として市議当選を狙う人も。
解散となれば約4500万円の経費がかかり、次期市長選は年明けまでずれ込む可能性がある。市長給与は月額85万5千円で、12月まで在職すれば約180万円のボーナスも支給される。この間、伊東のイメージダウンも避けられない。中でもふるさと納税には影を落とし、市担当課によると「今年はやめる」との問い合わせが届いているという。
26年度予算案の編成に支障が出る恐れもあり、市政停滞が長期化する可能性が指摘される。正常化のため、一日も早い事態の打開が求められる。
■市民の声
経済3団体を代表して田久保市長に早急な辞職を求める要望書を手渡した伊東商工会議所会頭の斎藤稔さん 経済人として望むことは市政の早期正常化であり、定例会初日での不信任決議案の可決は妥当な結果で評価する。今後、市議会を解散することは市政の停滞を長期化させ、市財政に大きな負担を強いるものでしかない。市長には良識ある判断を希望する。
田久保市長に辞職を求める署名活動発起人の市スポーツ協会会長浜田修一郎さん 今回1万人以上が「市政が回っていないから辞任してほしい」という思いを市長に突きつけた。それに対する回答はなく、最終的に不信任決議という形になった。自身が招いた事態なのだから、議会を解散するというのは言語道断。一刻も早く辞任してほしい。
田久保市長を支援する元会社員鈴木喜和さん(59)=玖須美元和田= 辞職を求める署名に意味はない。家族や友だちに書かせただけのものだ。市議会もばかだ。みんなが選んだ田久保市長を攻撃ばかりしてかわいそうだ。昔からの政権が続くというなら、もう伊東は終わりだ。
■田久保市長動静
田久保市長は1日午前8時45分ごろ、市役所に登庁した。10時から市議会9月定例会に出席し、散会後に市長公室で囲み取材に応じた。午後0時10分ごろに退庁した。
1日に市役所へ届いたクレーム・意見は315件(電話100件、メールなど215件)。除籍が判明した7月2日以降の累計は8515件(電話3880件、メールなど4635件)になった。
※8月14日以前は市秘書広報課のみ、15日以降は全庁の集計。
