伊豆市関野のウナギ店「うなとろ川善」(小出征史社長)は、淡水で養殖されたウナギを数日、海水入りの水槽で生かしてから調理する独自の「海水鰻(うなぎ)」の販売に向け準備を進めている。7月下旬の土用の丑(うし)の日に合わせて試験販売を開始する。
小出社長(55)が海と川を行き来する本来のウナギの習性に着目。海に近い環境で生かすことで、天然に近い身の締まり、香り、脂の乗りといった味を追求するのが狙いで、海水鰻と名付けたという。
同店敷地内に設置した海水水槽で、県内や愛知県の淡水養殖所から仕入れた良質のウナギを3日程度泳がせる。淡水からいきなり海水に入れるのではなく、人工的に作った汽水(海水と淡水を混ぜた水)で数時間慣らしてから、海水水槽へ投入する。海水は土肥など伊豆西海岸から調達。海水の酸性化を防ぎ、ミネラル補給などの効果が期待できるサンゴ(片)も活用している。
かば焼きを試食した常連客からは「皮のうまみが際立つ」「身が締まっていて味わい深い」との感想も聞かれるなど、評判も上々という。現在、海水鰻のメニューとして、かば焼きと白焼きの両方が楽しめる2色重を準備中。すり立ての生ワサビや肝吸いなどが付いたセットで、価格は3500~4千円を予定している。
小出社長は海水鰻について「手間暇はかかるが臭みが薄まり、特に尻尾に近い身に、ほどよい塩味が感じられるようになる。ウナギを通じて、海を含めた伊豆の自然環境の豊かさを感じてもらえらたうれしい」と力を込める。