熱海市清水町の起雲閣通りに6月初旬、市内初のクラフトジン蒸留所がオープンする。開業するのは同市の酒類製造・販売会社シークリフ・スピリッツで、熱海を中心に伊豆の食材を使ったジンを販売する。開店準備は着々と進んでいて、蒸留機の組み立てが終わった。ガラス張りの店内に火入れを待つ光輝く赤褐色の銅製の蒸留機が鎮座し、通りを行く人の注目を集めている。
仕入れたベーススピリッツに熱海のダイダイやレモン、伊豆半島で採れたハバノリ、下田市の白浜神社敷地内にある樹木ビャクシンの球果などで風味付けし、スタンダードタイプのジンを製造する。蒸留機の試運転やレシピの微調整をかけ、9月までの販売を目指す。完成した酒を味わうバーも併設する。
同社の釜谷道夫社長(52)は20代にバーテンダーとなり、2004年に西麻布でバーをオープン。国内外の蒸留所や酒蔵、ワイナリーの職人たちと関わるうちに自分で酒造りをしたいと決意した。
3年前にジンの香り付けの原料が豊富な熱海での開業を決めたが、場所の選定が難航。何度か計画が頓挫したが、夢を諦めずに福岡県の酒蔵や北海道の蒸留所で修行してきた。売り上げの一部は海の環境保護などに寄付する。今後は数種類を製造、販売していきたいという。
蒸留機はドイツ製で高さ3・3メートル。容量は300リットルの小型タイプ。2年前に発注したオーダーメードで、細部の色にもこだわった。
蒸留機を見上げながら、釜谷社長は「伊豆の香りの詰まったジンを世界中に届けていきたい」と前を見据える。
5月中は資金調達のため、クラウドファンディングを開設している。クラウドファンディングの問い合わせは担当者〈メールt.ota@seacliff.jp〉へ。